円安で変わる暮らしとお金。「生活防衛×資産形成」の新しい投資戦略
2025.11.07最近、「円安」という言葉を耳にする機会が増えています。ニュースでは1ドル150円台と報道されるケースもあり、2020年半ばでは1ドル110円前後といった円の価値に慣れていた方にとっては、「なんとなく不安だ」と感じる場面もあるのではないでしょうか。
円安は、投資家だけでなく、消費者の生活全体に影響を及ぼします。輸入品の値上がりや海外旅行のコスト上昇など、実際に家計を圧迫する場面も少なくありません。
本記事では、円安が暮らしに与える影響をわかりやすく解説したうえで、ライフスタイルに合わせた資産形成の考え方や円安局面における投資戦略について具体的に紹介していきます。これからの暮らしを守る手段として、投資をどのように活用できるのかを考えてみましょう。
円安が私たちのライフスタイルに与える3つの影響
円安が進むと、海外からの輸入価格が上昇し、家計にも大きな負担がかかります。また、旅行や留学、オンラインショッピングなど、日常のあらゆる場面で「円の価値が下がったこと」を実感することが増えてきました。
ここでは、円安がどのように日常生活に影響しているのか、具体的にみていきましょう。
輸入品の価格が上がり日常の出費が増える
現在の日本では、食料品・日用品・原油・電気・ガスといった多くの物資を海外から輸入しています。円安が進行すると、「外貨で買っているもの」の仕入れコストが上昇し、結果的に支払う価格にも反映されるケースがあります。
たとえば、以下のような事例が挙げられます。
- 冷凍食品やスナック菓子の一部が2024年に10〜15%値上げ
- ガソリン価格の全国平均が2024〜2025年にかけて一時1リットル=180円超となった(※一部地域では190円台)
- 電気・ガスの「燃料調整費」が上昇し、家庭の光熱費が月平均1,000〜2,000円増加。2022年に電気代が前年度比で約1,953円増加、ガス代が約481円増加しており、光熱費総額として「月平均1,000〜2,000円程度」増加した
とくに家計の支出に占める食費や光熱費の比率が高い家庭では、円安による影響を強く受けやすいでしょう。
電気代の参照 全国の平均的な月あたりの支出海外旅行や留学のハードルが上がる
海外旅行を検討している方にとって、円安は実質的な「コスト増」だといえるでしょう。 現地で使う費用がすべて外貨建てとなるため、為替レートの影響を直接受けます。例として、以下のような影響があります。
- 航空券や宿泊費が円ベースで割高になる
- 現地での飲食・移動・入場料などの出費が膨らむ
- 留学中の学費や生活費が予想以上にかさむ
たとえば、以前は1ドル=110円で約11万円だった費用が、1ドル=155円になると15万5,000円必要になります。約41%の負担増にあたり、旅行や留学のハードルを一段と上げる要因になります。
可処分所得が減少する
物価が上がっても、収入は簡単には増えません。そのため、結果的に可処分所得が減ってしまうため、次のような変化が起きやすくなります。
- 支出が増えて、毎月の貯金額や投資資金が圧迫される
- 生活費を切 り詰める必要が出てくる
- 外食や旅行など「ゆとりの支出」が減少する
生活の満足度にも影響が出るため、「節約」だけではなく、「お金の置き方そのもの」を見直す必要があるかもしれません。
円安で増えるコストは投資でカバーできる
円安によって生活費が上昇する場合、「節約」だけでは長期的な対応が難しくなりつつあります。 そのため、生活にかかるコストの一部を資産運用によって“補う”という考え方が重要です。
とくにインフレや為替の影響を受けにくい資産や為替メリットを享受できる外貨建ての投資先は、今後の暮らしを守るうえで重要な選択肢となるでしょう。ここでは、円安局面で注目される代表的な投資アプローチについて解説します。
インフレや円安に強い「生活防衛型資産」に注目
生活コストが上がる局面では、インフレや為替の影響を受けにくい、恩恵を受けやすい資産に目を向ける必要があります。
代表的な生活防衛型資産は以下のとおりです。
- 生活必需品に関連した海外株:インフレ時にも安定した需要がある企業の株式
- グローバルETF:分散と安定性を兼ね備え、為替メリットも得られる
- 不動産投資信託(REIT):物価上昇とともに家賃収入も上がる傾向があるため、実質利回りの確保に貢献
- インフレ連動債(物価連動国債など):物価上昇に応じて元本や利息が増える仕組み
単に円で貯蓄するだけでは難しい「物価や為替の変動に強い備え」として、これらの資産が役立ちます。
「今の生活」と「将来の生活」のお金を分けて考える
円安やインフレで生活費が圧迫される状況では、資産の使い分けも重要になります。 すぐに使うお金と、将来に向けて増やしたいお金を明確に区別すれば、無理のない資産形成につながるでしょう。
以下のような使い分けを意識することが重要です。
- 短期用:円建ての現金・流動性の高い資産
食費・光熱費・医療費などの生活費に充てる - 中長期用:為替や成長に備える外貨建て資産
教育費、老後資金など将来の支出に向けて運用
たとえば、カンムの「Pool」は固定利回り2%※の投資とクレジットカードが一体型になっているサービスです。短期の資金ニーズにも柔軟に対応できるため、日常の支出と資産運用のバランスを取るツールとして活用できます。
資産を長期間固定せず、生活費と分けて管理できるため、運用と日常支出のバランスを保ちながら、「手元に置きながら増やす」という考え方が可能です。また、円安や物価上昇による家計の負担を緩和する手段としても有効といえます。
※税引前の数字。固定利回りとは利回りがあらかじめ予定されていることを指します。運用成果を保証するものではありません。通貨を分けて「リスク分散」する
円安の影響を受けすぎないためには、「円」だけに偏らず、複数通貨に分散することも大切です。 外貨建て資産を一定割合持つことで、円の価値が下がったときでも資産全体の価値を保ちやすくなります。
具体的な実践方法としては、次のような選択肢があります。
- 米国株式型の投資信託を毎 月1万円から積立(例:S&P500、全世界株)
- 外貨普通預金口座を活用し、少額からドル・ユーロを保有
- 海外資産連動型の投資信託をNISA口座で活用
- 目的ごとに通貨を分けて管理する(旅行資金はドル、老後資金は円+ドル)
通貨を分散することによって、資産価値の安定化だけでなく、将来の外貨支出への備えにもつながるでしょう。
ライフイベントに合わせて投資を計画的に設計する
投資は単に資産を増やすためだけでなく、「使う目的」や「使う時期」に合わせて設計しましょう。
とくに、円安局面では、将来的に発生する外貨建ての支出に備えておくことで、為替変動の影響を和らげることができます。
ここでは、代表的なライフイベントに応じた通貨と投資戦略の考え方について詳しく解説します。
海外旅行・留学・移住を考えるなら外貨積立が有効
海外旅行や語学留学、将来的な海外移住を検討している場合には、外貨での支出が避けられません。為替レートの変動によって、円での準備金額が大きく変わるため、あらかじめ外貨で備えておきましょう。
外貨積立の代表的な方法には、次のような選択肢があります。
- ドル建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)
証券口座で購入でき、元本変動リスクが低く、日々流動性がある - 外貨普通預金
銀行口座で少額から始められ、資金を「ドル建てで保管」する感覚に近い - 米ドル建て投資信託の定期積立
S&P500連動型など、長期的な値上がりも狙える外貨運用型のファンドを選ぶことで、通貨と資産成長の両方に備えられる
目的が明確であるほど、必要な通貨の種類や金額を逆算できるため、「いつ・いくら・何通貨で」備えるかを考えることが大切です。
子育て・教育資金と円安。「海外教育」を視野に入れる
近年では、子どもの将来に「海外大学」や「ボーディングスクール」などを視野に入れる家庭も増えており、教育資金も円安の影響を受けやすい分野の1つです。
たとえば、アメリカの大学で1年間にかかる費用(学費+寮費+生活費)は、平均で3万〜5万ドルともいわれています。1ドル=110円と1ドル=155円では、必要な円換算額に数百万円単位の差が生じる可能性もあります。
そういったリスクを軽減するために、以下のような工夫が重要です。
- 国内教育費は円建てで準備し、海外進学を想定した費用は外貨建てで分けて積立
- 進学時期に向けて、通貨と投資商品のバランスを調整する(例:中学生時点はリスク資産中心→高校生時点は安定資産中心)
また、学費に限らず、滞在費や航空券なども含めて「すべて外貨建てになる」という前提で資金計画を立てることが実践的な備えといえるでしょう。
アメリカの1年間の大学費用の参考 College Board: Trends in College Pricing 2024老後資金を「日本円だけ」にしない
高齢期を迎えるにあたり、「国内での生活」だけでなく、「海外移住」や「多拠点生活」を想定する方も増えてきました。また、国内においても、イ ンフレや円安が進むことで、日本円だけで資産を持ち続けることへの不安が高まっています。
そのため、老後資金の一部を外貨建て資産で運用しておくことも、リスク分散の一環といえるでしょう。外貨建て資産は、次のような金融商品が代表的です。
- 外国債券(米国債など)
一定の利息収入が得られ、通貨分散の効果がある - グローバルインフラETF(例:IGFなど)
世界各国のインフラ関連企業に投資することで、成長性と安定性を両立できる
長期的な運用を想定する場合は、為替変動リスクだけでなく、「世界の経済成長に連動する資産か」「インフレ耐性があるか」といった視点も取り入れておきましょう。
円安時に注目したい投資先とその理由
円安局面では、外貨建て資産や輸出関連銘柄が恩恵を受けやすくなります。為替差益や業績改善を狙う観点から、以下のような投資先に注目しましょう。
為替差益を狙える米国・先進国株投資
円安になると、ドル建てやユーロ建ての資産は、円に換算したときの評価額が上昇します。そのため、外貨建てで保有する株式や投資信託は、為替の追い風を受ける形でリターンが拡大するケースも少なくありません。
具体的には、次のような投資先が選択肢に入ってきます。
- S&P500連動型投資信託やETF
- VTI(米国全体に分散されたETF)
- VT(全世界株に投資するETF)
ただし、米ドル建てでの投資となるため、資金の用途や期間をよく見極めたうえで活用しましょう。
輸出関連銘柄は日本株 も選択肢の1つに
為替の影響は、企業業績にも直接的に反映されます。とくに輸出依存度が高い企業は、円安になることで海外売上高の円換算額が増え、利益の増加につながりやすくなります。
代表的な銘柄としては、以下のような業種・企業がイメージできるでしょう。
- 自動車:トヨタ、スズキなど
- 電子部品:村田製作所、TDKなど
- 産業機械:コマツ、日立建機など
日本国内の証券口座を通じて円建てで取引できる点は、外貨建て資産に不慣れな方にとって1つの選択肢となり得ます。ただし、業績や為替の影響を受けやすいことから、投資にあたっては内容やリスクを十分に理解したうえで検討することが大切です。
為替ヘッジ付き投信は慎重に活用を
外貨建て資産には、為替の上昇によるメリットと同時に、円高になったときの下落リスクも伴うため、為替ヘッジ付き投資信託を使うという選択肢もあります。
以下のような特徴があります。
- 為替の変動リスクを抑えることができる
円高や円安による資産評価額の変動を軽減する効果があり、為替リスクを抑えた運用を目指せる - 為替ヘッジのコストが発生する
ヘッジには金利差を埋めるためのコスト(スワップコストなど)がかかり、特に日本と海外の金利差が大きい場合はリターンが圧迫されやすい - 為替が有利に動いた場合の利益は得られない
円安時に期待される為替差益は、ヘッジによって相殺されるため、外貨建て資産の上昇メリットを享受できないことがある
投資目的や相場環境に応じて、ヘッジあり・なしを使い分けることが重要です。
円安時のポートフォリオのモデル例
ここでは、円安やインフレ環境を見据えた代表的な3つのポートフォリオモデルをみていきましょう。目的やライフスタイルに応じて構成を見直すことで、資産の安定性と成長性のバランスを図ることができます。
モデルケース1:生活防衛型(インフレ・為替に備える)
日常生活に影響を与えるインフレや為替の変動に対して、バランスよく備える構成です。運用と生活支出の両立を意識しつつ、資産を分散させることを重視しています。
- 外貨建てETF 40%(米国または全世界株式)
- 国内インフレ対応資産 30%(REIT、物価連動債など)
- 流動性資産 30%(現金、短期債券、Pool)
生活費に備えた現金とあわせて、短期でも使える資産として「Pool」を組み入れ、急な支出や資金調整にも柔軟に対応可能です。
モデルケース2:ライフイベント対応型(外貨支出を見越す)
以下は留学や海外旅行、移住など、将来的な外貨建ての支出が想定される場合に参考となる構成です。
- 目的別外貨資産 50%(米ドル建て積立、ドルMMFなど)
- 円建て株式・投信 30%
- 流動性資産 20%(Poolなどを含む)
外貨支出が明確に想定される(旅行、留学など)場合は、準備金の一部を外貨で保有することが効果的です。Poolは、為替タイミングを見極めながら、円資金を柔軟に管理する手段として活用できます。
モデル ケース3:守りの分散型(生活重視の長期設計)
為替リスクや市場の変動に配慮しながら、長期的に安定した資産形成を目指す構成です。定期的な見直しを前提とし、生活資金への対応力も意識しています。
- 為替ヘッジ付き投信 30%
- 円建て国内株・債券 40%
- 外貨建て資産 30%(安定型の外国債券や投資信託)
このモデルケースでは、為替リスクを抑えつつ、資産の分散と将来支出への対応力を両立させました。Poolを短期資金の受け皿として保有すれば、長期資産を取り崩さずに済むというメリットもあります。
まとめ
円安は、為替の話にとどまらず、日常生活や将来設計にも影響を及ぼす現象です。輸入物価の上昇や外貨支出の増加など、家計にとって見過ごせないテーマとなりつつあります。そのため、「円で持っているだけ」の資産構成にリスクがあることを認識し、生活と資産形成の両面からバランスのとれた対策が求められるといえるでしょう。
とくに、すぐに使うお金と長期的に運用するお金を切り分けることは、無理のない資産形成を続けるうえで重要な考え方です。また、「Pool」のように、日常資金と資産運用を無理なく両立できる仕組みを取り入れることで、変動する経済環境の中でも柔軟に対応しやすくなります。
円安やインフレといった外的要因に左右されすぎず、自分に合った生活と資産のあり方を考え、その第一歩として、資産の持ち方そのものを見直すきっかけにしてみましょう。