投資家はなぜ暴落で失敗するのか? 暴落時に「やるべきこと」と「やってはいけないこと」
2025.05.12株式市場は時に劇的な暴落を迎え、多くの投資家が混乱と損失に直面してきました。そのうえで、過去の危機を振り返ることで、私たちは「なぜ暴落は起きるのか」「そのとき投資家は何をすべきか」という重要な問いへの答えを見つけることができます。
本記事では、有名な暴落の背景と教訓、資産を守りながら成長させるための防御投資戦略について、多角的にみていきましょう。
投資暴落の歴史と原因
投資の歴史を振り返ると、1929年の世界大恐慌から2008年のリーマン・ショック、2020年のコロナショックに至るまで、株価や資産価格が急落する暴落は複数回起きています。
しかし、その原因やパターンをただしく理解しておけば、いざ暴落が起きた際にも冷静かつ的確な対応が可能です。
有名な投資暴落の事例
暴落は、過度な投機や信用取引の拡大、突然の経済危機など、さまざまな要因が重なり合うことで引き起こされるものです。そして、大規模な暴落の裏側を紐解くことで、資産運用におけるリスクの見極めや、それに適切に対処するための重要な教訓を得る機会にもなります。
ここでは、投資暴落の代表例を取り上げ、その背景と影響をみていきましょう。
1929年世界大恐慌
1929年10月24日(いわゆる「暗黒の木曜日」)を皮切りに株価が暴落し、「暗黒の火曜日」(10月29日)には、史上最大規模の株価下落が起こり、投資家たちのパニック売りが広がったという暴落です。1920年代のアメリカでは「狂騒の20年代(Roaring Twenties)」と呼ばれる好景気が続き、株式市場も急速に拡大している状況でした。銀行の取り付け騒ぎが連鎖的に拡大し、雇用や社会全体に深刻な打撃を与えています。政府や中央銀行の政策対応も後手に回ったため、不況が長期化し、世界各国に保護貿易主義の動きが広がりました。
2008年リーマン・ショック
アメリカの住宅バブル(サブプライムローン)に端を発し、金融工学による証券化商品の膨張がリスクの所在を不透明にしていたことが暴落を深刻化させました。背景に目を向けると、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、アメリカでは住宅価格が右肩上がりに上昇し続け、住宅投資が活発化しています。銀行や金融機関は、信用力の低い低所得層にも住宅ローン(サブプライムローン)を積極的に貸していました。
しかし、2006年ごろから住宅価格が下落に転じ、サブプライムローンの延滞や債務不履行が急増したことで不良債権を抱えていたリーマン・ブラザーズが破綻したという流れです。アメリカ史上最大級の企業倒産であり、「あのリーマンですら救済されない」という衝撃によって世界的な金融システムへの不信が一気に高まり、銀行間取引が滞る信用収縮を招き、企業活動も急速に冷え込みました。各国の中央銀行や政府が大規模な金融緩和や財政出動を行いましたが、世界経済が低迷する「グローバル不況」を引き起こすほどのインパクトがあったといえるでしょう。
2020年コロナショック
コロナショックは、新型コロナウイルスの感染拡大による世界的なロックダウンや行動制限によって、経済活動を一時停止状態に追い込んだ暴落です。観光・飲食・航空など消費関連セクターへの打撃が著しく、投資家の不安心理が一気に高まって株式市場は急落しました。
しかし、各国政府や中央銀行が前例のない規模の財政政策・金融政策を実施したことで、その後の株価回復も比較的早期に進んだ点が他の暴落と異なる特徴といえます。
暴落の原因とパターン
株式市場の暴落は、単一の要因だけで引き起こされるわけではなく、複数の要素が複雑に絡み合うことで多様なパターンがあるといえます。バブル崩壊やパニック売り、金融政策や金利変動による下落など、それぞれが異なるメカニズムと投資家心理を反映している点が特徴です。
ここでは、代表的な暴落のパターンと、それを引き起こす主要な要因について整理しながら、投資家が押さえておくべき市場の構造を探っていきます。
バブル崩壊型(ITバブル、サブプライム問題)
企業の将来性や不動産価格の上昇に対する過度な期待が膨らみ、実態と乖離した水準まで市場が上昇した後、何らかの引き金で一気に崩壊するパターンです。ITバブルでは、インターネット関連銘柄が天井知らずに買われた結果、急激な調整局面で多くの投資家が大損失を被りました。サブプライム問題では、ローンの債務者の返済能力を超えた過大な貸し付けや証券化が行われ、市場全体がリスクを正確に把握できないまま暴落となっています。
パニック売り型(ブラックマンデー、コロナショック)
突発的な悪材料や市場全体の投資家心理の急激な悪化によって、売りが売りを呼ぶ連鎖が生じるケースです。ブラックマンデー(1987年)ではプログラム売買が自動的に売り注文を増幅 させたことが下落を加速させました。
コロナショックでも、未知のウイルスに対する恐怖と経済活動の停止が相まって投資家のリスク回避行動を誘発し、短期間で世界的な株価暴落につながっています。
金融政策・金利変動型(スタグフレーション懸念)
中央銀行の利上げや金融引き締めが予想以上に強く実施された場合、企業の借入コストや個人消費は停滞します。結果として、景気後退の懸念が高まる点は知っておきましょう。また、インフレ率が同時に上昇し続けるスタグフレーションによって、投資家は企業の収益悪化と貨幣価値の減少を同時に懸念し始めます。 その結果、株式市場から一気に資金が流出し、暴落を招きやすくなります。
暴落時に投資家が考えたい行動
投資において、暴落のタイミングや相場の変動に対して「どう行動すべきか」を明確にすることは、資産を守るために欠かせない要素です。感情に流されず冷静な判断を下すためには、自身の投資スタンスを持ったうえで、ポートフォリオの見直しや分散投資などの基本的戦略を徹底することが重要です。
一方で、パニック売りや一点集中投資などのリスクが高い行為は、暴落時に資産を大きく減少させる可能性があるため、できるだけ感情的にならないことがポイントです。ここでは、暴落局面で投資家が取りうる行動の具体例と、長期的な資産形成につなげるための視点についてみていきましょう。
感情に流されない投資マインドの重要性
相場が乱高下する局面では、短期間の大きな値動きやメディアの過剰報道に翻弄されがちです。しかし、情報に惑わされない冷静な判断と長期的な視点を維持することが重要です。過度な恐怖心や根拠の薄い期待を抱いてしまうと、パニック売りや無謀な買い増しに走ってしまうリスクが高まり、資産運用に深刻なダメージをもたらす可能性があるためです。
感情に左右されない投資の鉄則
投資家心理は、相場の動きに大きく左右される要素の1つです。相場が大きく動く局面では、多くの投資家が「恐怖」と「欲望」という感情の間で揺れ動きます。たとえば、株価が急落したときには「これ以上損をしたくない」という損失回避の心理が働き、パニック的に売却してしまうケースも予想されるでしょう。
一方で、相場が好調なときには「もっと利益を得たい」という欲望が膨らみ、高値掴みをしてしまうリスクも予想されます。感情の波に流されないためには、自分なりの明確な投資戦略やルールを事前に定め、どんな局面でも冷静さを保てる仕組みづくりが欠かせません。
長期的な視点を持つ
一時的な相場の乱高下に右往左往するのではなく、企業の本質的な収益力や経済の長期成長トレンドを見据える姿勢が重要です。短期的な株価下落に慌てず、割安な価格で優良銘柄を買い増す好機と捉えることで、暴落後の相場回復局面で利益を獲得できる可能性があります。
暴落時にやるべきこと
暴落の局面に直面したとき、投資家は不安や混乱のなかで判断が求められます。しかし、あらかじめ定めた投資方針やリスク許容度を再確認し、損失を最小限に抑えながら将来の回復局面でリターンを得るための行動を取らなければなりません。
ポートフォリオの見直しや分散投資の徹底、余裕資金を活用した買い増しなど、理にかなった施策を実行することが大切です。長期的な資産形成に向けた基盤をしっかりと築くことができるでしょう。
ポートフォリオの見直し
暴落発生によって、セクター別や地域別などの資産配分が大きく変化する場合もあります。こういった場合はリスク許容度に基づいたポートフォリオの再確認とリバランスを行いましょう。定期的に見直すことで、リスクが偏りすぎていないか、今後の市場環境に適したポートフォリオかどうかを判断しやすくなります。
分散投資の徹底
株式のみでなく、債券や不動産、コモディティ、国際分散など多角的な投資対象を組み合わせることで、大きな相場変動時にも資産全体の下落を抑制しやすくなります。特定のセクターや地域に集中投資していると、一度の暴落で資産価値が大幅に毀損するリスクが高まるといえるでしょう。長期的に安定したリターンを目指すためには、分散投資の徹底が不可欠です。
暴落時は余裕資金での買い増しが有効
市場が暴落すると多くの投資家が悲観的になり、優良企業の株や堅実なビジネスモデルを持つ銘柄でさえ、実態に見合わない低価格となるケースがあります。そのため、事前に確保しておいた余裕資金を活用した買い増しの好機だといえるでしょう。
とくに、財務に問題がなく、健全で長期的な成長が期待できる企業に分散して投資することで、市場回復時に大きなリターンを狙える可能性が高まります。
ただし、底値を正確に見極めるのは困難なため、一度に全額を投資するのではなく、複数回に分けて段階的に買い増しを行うことが重要です。また、あらかじめ投資 の上限金額や購入条件を明確にしておくことで、感情に流されない安定した投資判断がしやすくなります。
暴落時にやってはいけないこと
暴落が起こったタイミングでは、市場全体に不安や恐怖が急速に広がり、投資家は冷静な判断を失いやすくなります。こういった状況では、普段は取らないような非合理的な行動を選んでしまう投資家も少なくありません。
ここでは、暴落の局面においてどのような行動を避けるべきか、その理由と具体的な事例を交えながらみていきましょう。
パニック売り
相場の急落を目の当たりにして、含み損が拡大するリスクから焦って資産を一括売却してしまうケースもあります。たとえば、保有銘柄が1日で20~30%下落すると、今後も下がり続けると考えて慌てて売り払いたくなるのが人間の心理です。
しかし、翌日や短期の反発局面で一気に値を戻すこともあるため、回復の恩恵を受けられなくなってしまいます。暴落時こそ客観的な指標や企業の業績動向、業界全体の見通しを冷静に分析し、「何を売り、何を保有すべきか」を慎重に検討しましょう。
一点集中投資
高成長が期待される分野や流行のセクターに資金を集中させると、相場が好調な間は大きなリターンを得る可能性に期待できるでしょう。しかし、暴落時にはセクター全体が大きく売られ、たとえ優良企業であっても株価は一斉に急落するため、致命的なダメージを受けるリスクは高くなります。暴落した場合には、特定業種や特定銘柄への依存度が高いほどリスクが大きい点は把握しておきましょう。
過度なレバレッジの使用
信用取引や先物取引で 自己資金の数倍を投資すれば、上昇局面では高いリターンが得られる可能性はあります。しかし、下落局面では損失が加速度的に拡大します。暴落が続けば証拠金維持率の問題で強制ロスカットに追い込まれ、投資資金のほとんどを失う危険性もあります。金融機関の信用を借りて投資を拡大する場合であれば、相場変動や資金管理を意識しましょう。
不十分な情報収集や独りよがりな判断
暴落時には混乱に乗じた誤情報や根拠の薄い噂がSNSやメディアを通じて急速に拡散しやすい傾向があります。たとえば、「大手企業が破綻する」という真偽不明の情報が流れ、検証せずに短絡的に売却してしまった場合、後で事実無根だと判明して株価が急回復する可能性もあるでしょう。複数の情報源や専門家の意見を照らし合わせ、客観的な分析を心掛けることがリスク回避につながります。
短期的な資金を投じる無理な運用
本来は数カ月先や1年以内に使う予定の資金を、「今が買い時」といった思い込みで投資に回すのは極めて危険です。暴落が予想以上に長引けば、生活費や事業資金、学費などが不足し、損失が膨らんでいる状態でやむなく売却しなければならなくなる可能性があるためです。
暴落に備える戦略
暴落は投資家にとって避けられないリスクです。しかし、事前に十分な備えを行うことで、影響を最小限に抑えることが可能です。とくに、資産クラスの分散やキャッシュポジションの確保、適切なヘッジ手段の活用などは、下落局面を乗り切るための強力な防御策となり得ます。
ここでは、突発的な相場変動にも動じず、むしろ長期的なリターン機会へと転換 するために押さえておきたい「暴落に備える戦略」を具体的に解説していきます。
リスク管理の基本
資産クラスを分散させる(株式・債券・金・暗号資産など)
リスク特性や値動きの傾向が異なる資産を組み合わせることで、一部の市場が暴落してもポートフォリオ全体の変動幅を抑制できます。たとえば、金は歴史的に「有事の資産」と呼ばれ、地政学リスクや金融不安が高まるときに買われやすい性質があります。
一方、暗号資産は価格変動が激しい分、高リスク高リターンの要素も強いため、組み入れ比率を慎重に考えなければなりません。
キャッシュポジションの確保
急激な相場の変動が起きても、手元に現金や流動性の高い資産があれば、買い増しや資金繰りに余裕を持って対応できます。生活資金と投資資金を明確に区別し、投資資金の一部を常に現金で保有しておくことで、暴落時のチャンスを逃さず活用できる可能性が高まります。ただし、インフレが進行している局面では現金の実質価値が目減りするリスクもあるため、長期的な視点でのバランスが欠かせません。
防御投資戦略 を立てる
防御投資戦略とは、資産を成長させるだけでなく、リスクを最小限に抑えることを主眼に置いた運用方針です。市場の急変動が起きた際には、保有銘柄の大幅な下落や流動性の低下によって投資家の資産が短期間で毀損する可能性があります。
配当株・ディフェンシブ銘柄へのシフト
ヘルスケアや公共事業、生活必需品などのセクターは、景気後退局面でも需要が比較的安定しているため、株価の変動幅が小さい傾向にあります。また、高配当 銘柄は株価下落によるキャピタルロスを配当金である程度カバーできる点が魅力です。
ヘッジ手段(オプション取引・債券投資)
プットオプションの購入や先物取引などのデリバティブを活用することで、株価の急落に備えたヘッジをかけることが可能です。また、国債や社債を組み合わせることで、株式相場との相関が低い資産を保有し、暴落時のダメージを緩和できます。ただし、デリバティブには商品設計が複雑なものも多く、誤った運用を行うと逆にリスクが高まる場合もあるため、十分な知識と経験が不可欠です。
分散投資によるリスクの平準化
防御的投資においては、1つの資産やセクターに依存しない分散投資が極めて重要です。株式や債券、現金、不動産などの異なる資産クラスに加え、地域や業種ごとにポートフォリオを組むことが重要です。特定市場の急変動リスクを抑えることが可能になります。
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資産クラスの分散: 株式に加えて債券や現金、コモディティ(例:金)を組み合わせ、リスク特性の異なる資産を保有します。これにより市場の下落時にも一部の資産が価値を保つ可能性が高まります。
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セクターの分散: テクノロジー、ヘルスケア、エネルギー、生活必需品など、異なる業種に分けて投資することで、業界特有のショックに強くなります。
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投資サービスの多様化: さまざまな投資サービスを活用することも重要です。 たとえば、カンムの「Pool」は、固定利回り2%※の投資が可能なサービスです。元本保証はないものの、運用中の資金を生活資金として使 える柔軟性があります。それぞれの投資サービスの特徴を意識したうえで運用しましょう。
まとめ
大規模な暴落は投資家の資産を短期的に大きく毀損する恐れがあります。しかし、歴史を振り返ると株式市場は暴落と回復を繰り返しながら拡大してきたといえるでしょう。
パニック売りや一点集中投資を避け、長期的な視点での資産形成を考えることで、暴落時の混乱を逆手に取れます。結果として、市場の回復局面で大きなリターンを得るチャンスを掴むことも可能です。投資は常にリスクと隣り合わせです。そのうえで、健全なマインドセットと戦略があれば、暴落を乗り越え、持続的な資産成長の実現につながるといえるでしょう。