老後資金が必要な理由とは。資産形成の方法と考え方について解説

2024.12.06

退職後の生活は長期化している傾向です。そのため、年金収入だけでは賄えない生活費や医療費、予期せぬ支出に対して、老後資金の準備が不可欠です。

しかし、実際にどのくらいの資金が必要で、どのように資産形成を進めるべきか迷う方も多いでしょう。この記事では、老後資金が求められる背景や効率的な資産形成の方法と考え方についてみていきます。

老後資金が必要な理由

日本では、長寿化が進んでいることから、退職後の生活が予想以上に長くなるケースも多いといえるでしょう。老後の生活を問題なく行うためには、日々の生活費だけでなく、医療費や介護費といった費用も含めて、安定した生活を続けるための十分な資金を用意する必要があります。

長寿化による生活費の増加

日本は世界有数の長寿国です。医療の発展や生活環境の向上によって、平均寿命は年々伸び続けています。厚生労働省のデータによれば、2023年時点での日本人の平均寿命は男性で81.6歳、女性で87.7歳に達している状況です。そのため、生活費を計画的に用意しなければなりません。

たとえば、60歳で退職し、平均寿命まで生きる場合、20年以上にわたって生活費が必要です。仮に、毎月20万円の生活費がかかったとすれば、20年間で必要な金額は4,800万円になります。そのため、予測できない医療費や介護費、物価上昇なども考慮した長期的な資金計画が不可欠です。

公的年金だけではカバーしきれない現状

日本年金機構によると、モデルケースでの年金月額は夫婦で約22万円、単身者は約13万円であるものの、都市部での生活費には不足しがちだといえるでしょう。

また、賃貸や持ち家の維持費、旅行や趣味などのライフスタイル次第では、より多くの資金が必要です。物価が上昇した場合や予期しない大きな出費が発生した場合、年金だけでは対応しきれなくなります。そのため、年金以外の収入源や貯蓄・資産運用を組み合わせた資金計画が大切です。

高齢化社会に伴う支出増加の懸念

傾向として、高齢化が進むほど、医療や介護にかかる支出は増加しています。厚生労働省の報告によると、75歳以上の高齢者の医療費はとくに高く、加齢による病気や慢性疾患が増えるため、治療や定期的な医療費の負担も大きいといえるでしょう。

介護についても、年齢が上がるほど、介護サービスや施設利用のニーズが増加します。施設入居費や訪問介護の費用は年間100万円以上に達することも多いため、備えておくことが重要です。医療・介護の負担が増えることを踏まえて、予備資金を確保しましょう。

老後資金2,000万円問題の真相

ここでは、2019年に金融庁が「老後に2,000万円の資金が必要」と発表したレポートの内容について、ふれていきます。実際の必要額は、個人のライフスタイルや生活費、健康状態によっても大きく異なります。老後に向けた資金計画を考える際の参考として、老後資金2,000万円問題の背景や実際の必要額を考えてみましょう。

金融庁のレポートと影響

2019年に金融庁が発表した報告書「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」によって、「老後2,000万円問題」が注目を集めました。具体的には、年金だけでは毎月5万円の不足が生じ、20~30年間続く場合、老後のために2,000万円の貯蓄が必要になるという試算でした。

ただし、金融庁の意図としては「2,000万円が必要」という断定ではなく、あくまで平均的な不足額の目安を示したものだったということです。

必要資金は人によって異なる理由

2,000万円の資金が示したのは、あくまでモデルケースの目安です。実際には、個人の生活スタイルや支出内容によって大きく異なります。たとえば、都心で賃貸に住むケースと地方で持ち家を所有するケースでは、住居費に差があるといえるでしょう。また、趣味や娯楽にどの程度の費用をかけるかによって、老後の生活費は大きく変わります。

健康状態によって、医療費や介護費の負担も異なります。とくに年齢を重ねると医療費は増加しやすくなり、持病の悪化や介護の必要が生じた場合には、予期しない支出が増える可能性もあります。そのため、一律に「2,000万円が必要」というわけではなく、自分のライフプランや生活環境を考慮して必要な資金を見積もることが重要です。

2,000万円が示す平均的な生活費の目安

過去の2,000万円という数字は、老後の不足を補うための平均的な生活費として算出されたものです。

一般的に、60代の夫婦二人が標準的な生活を維持するためには、月々27万円程度の生活費が必要とされています。しかし、年金の平均受給額は夫婦あわせて約22万円であり、毎月の不足が約5万円と推計されるため、2,000万円はあくまでモデルケースの目安として理解されるべきです。

独身者の場合は夫婦よりも生活費が少なくなる傾向であるため、2,000万円という金額は高めの試算といえます。一方で、物価上昇や医療費の増加はあり得るため、余裕を持った老後資金の準備を心がけましょう。

生活スタイル別の老後資金モデル

老後資金の必要額は、生活スタイルや住む地域、家族構成によって大きく異なります。ここでは、それぞれのモデルケースを詳しくみていきましょう。

都市部に住む夫婦のモデルケース

都市部に住む夫婦の場合、以下のような要素から老後資金は高額になると予想されます。

  • 高額な固定費:都市部では家賃や住宅ローン、食費、光熱費などが地方に比べて高くなることが多い。また、交通費や医療費も都市部では上昇しやすいため、出費も高額となる。
  • 生活水準の維持:都市部での生活は、利便性が高いものの、娯楽や買い物などにかかる費用も増える傾向があり退職後も同じ生活水準を保つための準備が必要。

都市部に住む夫婦が安心して老後を過ごすためには、2,000万円を超える資金が必要とされるケースも考えられます。2,000万円不足するとされた収支割合からみていきましょう。

引用:統計局|「Ⅱ 世帯属性別の家計収支(二人以上の世帯)」

簡潔にいえば、この計算では月5.5万円が不足し、30年ほど経つことで約2,000万円不足するとされています。そして、食費は6.5万円、住居は1.3万円の計算です。仮に都会暮らしで、住居費用が高く、8万円程度と仮定した場合、差額は6.7万円となります。30年住む場合は、住居だけでもさらに2,400万円程度の資金が必要です。

あくまでも試算であるものの、自分の老後に必要な金額を想定しながら、資産を運用していく必要があるといえます。

地方に住む独身者のモデルケース

地方での生活費は、次のような要素から都市部に比べて低く抑えられるケースも少なくありません。

  • 低い生活コスト:地方では、家賃や生活費、食費が比較的安価であるため、都市部よりも少ない資金で生活を維持しやすい。また、地方での交通費は安価で済む場合が多く、公共交通機関を利用しない場合も多いため、出費が抑えやすい。
  • 生活スタイルがシンプル:地方に住む独身者の場合、都市部のような頻繁な外食や娯楽の出費が少ない傾向。そのため、生活全般にかかる費用がコンパクトにまとまりやすい。

ただし、車が必須な地域や戸建て住宅を保有するケースも多いため、維持費や燃料費、修理費用なども計算することが大切です。

ライフスタイルにこだわる場合のモデルケース

退職後も趣味や旅行など、ライフスタイルにこだわりたい場合は、次のような要素があるため、多くの資金が必要です。

  • 趣味の費用:ゴルフやアウトドア、アート、ガーデニングといった活動には年間で数十万円の支出が必要。
  • 旅行やレジャー:国内外を問わず旅行に行く頻度が多い場合、年間で数十万円から100万円以上の支出が必要。とくに海外旅行や長期滞在を考えている場合は、資金計画に余裕が必須。
  • 健康維持や自己投資:フィットネスジムやカルチャーセンター、学び直しといった自己投資を続けたい場合、その費用も確保する。月に1~2万円の支出であっても年間では数十万円となる。

ライフスタイルを考慮する場合、最低限の生活費に加え、余裕資金を組み込んだ計画が大切です。結果的に、必要な老後資金が都市部に住む夫婦よりも高額になるケースもあります。

老後資金のための具体的な資産運用方法の事例

ここでは、老後資金のための具体的な資産運用方法についてみていきましょう。

確定拠出年金(iDeCo)の活用

確定拠出年金(iDeCo)は、老後の資産を効率よく増やすための税制優遇制度がある個人型の年金制度です。毎月積み立てた金額が所得控除となり、所得税や住民税の負担を減らせます。また、運用益も非課税で再投資され、最終的に受け取るときまで税金がかかりません。

  • メリット:所得控除により節税ができ、運用益も非課税。
  • デメリット:60歳まで引き出せないため、短期間での流動性が求められる場合には不向き。

iDeCoは株式や債券、投資信託などの選択が可能です。若い年代であれば、リスクを取りやすい株式ファンドや外国株式ファンドを中心に運用し、年齢が上がるにつれて安定性のある債券型にシフトしましょう。

NISA・投資信託の活用

NISAや投資信託は、長期運用でリスクを抑えながら、安定的な資産形成を目指す方法です。NISAのつみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は240万円までの投資が非課税となり、税金のかからないまま長期的に運用できるため、老後資金形成に適しています。

  • メリット:NISAは無期限の非課税枠が設けられており、長期的な投資により複利効果が期待できる。少額からの積立も可能であるため、投資初心者でも始めやすい。
  • 代表的な運用商品:「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」や「eMAXISSlim米国株式(S&P500)」などのインデックスファンドは、世界の株式市場や債券市場全体に分散投資ができ、リスク分散に適している。リターンは市場の成長に連動するため、安定した資産形成が見込めま、運用手数料も低い。

積立NISAや投資信託を活用すれば、リスクを抑えつつ、少額でも効率的に資産を増やしていくことが可能です。

Poolを併用する

Pool」は、投資金額に対して決まった利回りで運用が行われます。そのため、値動きのリスクを抑えながら資産を運用できます。たとえば、Poolの場合は、固定利回り2%のリターンが期待でき、普段の生活で使用するクレジットカード機能も使用可能です。

  • メリット:値動きのリスクがなく、2ヶ月の短期で安定した利回りが期待できる。特に、資産を計画的に運用したい場合に向いている。また、クレジットカードで支出にも対応できる。
  • デメリット:高リターンは期待できないため、大きな資産増加には不向き。

利回りや運用期間が異なる他の投資商品と組み合わせながら、Pool を手元資金の資産形成に活用してはいかがでしょうか。

※ 税引前の数字。運用成果を保証するものではありません。

老後資金に向けた今からできる準備

老後に備えた資産形成は、早めに始めることで複利の効果を活かせるため、退職後の生活に余裕を持たせることが可能です。ここでは、「資産運用」「節約」「定年後の働き方」という3つのポイントに分けて、今からできる具体的な老後資金の準備方法を解説します。

若年層からスタートする資産運用のメリット

若年層の段階から資産運用を始めると、複利の効果を最大限に活かせるため、時間をかけて資産を増やすことが可能です。複利は、運用益が新たな利益を生み出す仕組みを意味し、運用期間が長いほど資産が加速的に増える効果が期待できます。

  • 複利の効果:仮に年利3%で資産を運用し、毎月積み立てる場合、30年間では元本よりも大幅に多い運用益が得られる。とくに、積立NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用すれば、運用益が非課税となる。
  • リスク分散のしやすさ:長期運用では、株式や債券などの異なる種類の資産を組み合わせてリスクを分散させやすい。ある市場が一時的に下落しても、長期的には回復する可能性に期待できる。

節約と無駄の見直し

老後資金を効率よく貯めるためには、日々の生活での無駄遣いを抑えることも重要です。次のようなポイントから支出を見直し、必要な部分に絞りましょう。

  • 固定費の削減:家賃や保険料、サブスクリプションなど、毎月発生する固定費の見直しは効果的。格安スマホに切り替える、必要のない保険を解約する、無駄なサブスクリプションを解約するなどで、年間数万円から数十万円の節約が可能。
  • 外食・嗜好品の見直し:生活費の中で外食や嗜好品(タバコやアルコールなど)の費用が大きい場合は、回数を減らしたり、自炊に切り替えたりすることで節約効果が見込める。
  • 余剰分を貯蓄や投資に回す:節約したお金は、老後資金として積立NISAや投資信託などの積立投資に回すと複利効果を得られる。

定年後も働く選択肢を考えておく

定年後に再就職やパートタイム、フリーランスとして働くことを選択することで、老後資金に余裕が生まれやすくます。また、近年は定年後も働き続けることで、心身の健康を維持し、社会とのつながりを保つための手段としても注目されています。

  • 収入を補うメリット:定年後も働くことで、年金だけに頼らず安定した収入を確保できる。月に数万円でも収入があると、老後資金の取り崩しを減らせるため、資産を長持ちさせることが可能。
  • 新たなキャリアや学びの場:定年後の仕事は、自分のペースで新たなキャリアに挑戦したり、趣味を活かして副収入を得たりする機会としても考えられる。たとえば、講師業やコンサルティング、地域活動に参加することも可能。
  • 健康維持:働き続けることで生活にリズムが生まれ、身体的・精神的な健康維持にもつながる。仕事を通じて社会と関わることは、老後の生活を充実させる手段となる。

リモートワークやフリーランスといった柔軟な働き方が増え、選択肢が広がっているため、自分の生活スタイルに合った働き方を見つけやすい環境です。

まとめ

老後資金の準備は、安心して退職後を迎えるための重要な要素です。長寿化や高齢化社会の進行により、退職後の生活が長期化しているため、年金だけではカバーしきれない生活費や医療・介護費用に備える必要が高まっています。

効率的な資産形成方法としては、iDeCoや積立NISAといった税制優遇のある運用や固定利回りを期待できるで「Pool」のような短期の固定利回り投資も選択肢になります。また、日常生活の節約や、定年後も働くことで安定した収入を確保することも、老後の資金にゆとりを持たせる方法の1つです。

資産運用の方向性や生活費の見直しを通じて、今から少しずつでも準備を進め、豊かな老後生活を目指しましょう。

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