インフレと円安に備える。ゴールド投信はポートフォリオに加えるべきか徹底解説
2025.06.26物価上昇や地政学リスクが続いていることから、資産として金(ゴールド)に注目が集まっています。ただ、現物を保管するには手間とコストを気にしなければなりません。
そのため、選択肢の1つとしてゴールド投資信託があります。少額から自動積立でき、スマホで残高を確認することで金価格の値動きを取り込んだ資産運用が可能です。
本記事では、ゴールド投信の仕組みやメリットと注意点、代表的ファンドの比較までをみていきましょう。
ゴールド投資信託とは何か
ゴールドの投資信託は、ファンドを通じて金価格の値動きを手軽に取り込みつつ、保管や流動性の悩みを解消できます。ここでは仕組みからETFとの違い、ほかの金投資手段との比較していきましょう。
仕組みと基本用語
ゴールド投資信託の仕組みとして、何に投資し、どう価格に反映されるのかを把握することが大切です。
- 運用スタイル
- 現物型:ファンドがロンドン市場の金地金を保管し、その評価額を基準価額に反映
- 先物・ETF型:金先物や海外金ETFを活用し、保管コストを抑制
- 基準価額
- 1万口あたりの時価。金価格(USD/oz)と為替(USD/JPY)が主要要因
- 信託報酬
- 年0.4〜1.6%が目安。保管料やロール費用を含む
- 為替ヘッジ
- ドル建て金価格を円建てに転換する際の為替変動を抑える仕組み
ETFとの違い
投資信託とETFはともにファンドです。しかし、以下のように購入方法やコスト構造が異なります。
項目 | ゴールド投資信託 | ゴールドETF |
---|---|---|
売買方法 | 1日1回の基準価額で購入・解約 | 取引所でリアルタイム売買 |
最低投資額 | 100円〜1,000円 | 1口(例:東証1540は約7,000円) |
手数料 | 購入手数料0〜1%+信託報酬 | 売買手数料+運用経費率 |
スプレッド | なし(基準価額) | あり(気配値差) |
自動積立 | ほぼすべてのネット証券で対応 | 一部証券のみ可能 |
投資信託は積立しやすさとスプレッドなしがメリット、ETFはリアルタイム価格と取引の自由度がメリットです。
金価格に連動する他の方法との比較
金に連動する手段は、投資信託だけではありません。純金積立やCFDなどと比較し、ゴールド投資信託の特性を把握しましょう。
手段 | 最低投資額 | 保管・維持コスト | 流動性 | 主なメリット | 主なデメリット |
---|---|---|---|---|---|
純金積立 | 月1,000円〜 | 月額料(約0.15%/年) | △ | 現物をコツコツ増やせる | スプレッドが広め |
地金購入 | 数十万円〜 | 保管料(0.5%/年) | △ | 実物を手元に置ける | 盗難・保管リスク |
CFD | 数千円〜 | 手数料+金利調整 | ◎ | レバレッジと24時間取引 | 元本超過損リスク |
ゴールド投信 | 100円〜 | 信託報酬0.4〜1.6% | ○ | 少額積立が容易 | 為替影響 |
ゴールドETF | 約7,000円〜 | 経費率0.4〜0.8% | ◎ | リアルタイム売買 | 売買手数料 |
代表的なゴールド投資信託(国内販売)
日本で販売されているゴールドに関連した投資信託には、以下のようなものがあります。
ファンド名 | 運用会社 | 主なタイプ | 為替ヘッジ | 主な特徴 |
---|---|---|---|---|
明治安田ゴールド/オール・カントリー株式戦略ファンド(愛称:ゴルカン) | 明治安田アセット | 世界の金鉱山株(株式) | なし | 米・加・豪などの大手・中堅金鉱山株へ分散投資。金価格が上昇すると業績レバレッジが効きやすい。 |
iシェアーズ ゴールドインデックス・ファンド | ブラックロック | 現物連動 | あり/なし | LBMA 金価格(円換算)を忠実に追う低コスト型。ネット証券で積立しやすい。 |
SMT ゴールドインデックス・オープン | 三菱UFJアセット | 現物連動 | あり/なし | ファミリーファンド方式。1,000円から買え、純資産残高が国内トップクラス。 |
三菱UFJ 純金ファンド(ファインゴールド) | 三菱UFJアセット | 現物連動 | なし | 東証「純金上場信託」を主要投資対象にし、日本国内での現物保管を重視。 |
大和・ゴールド・ファンド | 大和アセット | 先物+ETF | なし | COMEX 先物や海外ETFを組み合わせ。毎月決算型もあり分配金が発生する場合がある。 |
日興アセット ゴールド・ファンド | 日興アセット | 現物連動 | あり/なし | ロンドン金価格(ドル建て)への連動を目 指す老舗ファンド。販売会社が多く入手しやすい。 |
ポートフォリオにゴールド投資信託を組み込む理由
金は「利息を生まない資産」です。しかし、インフレや市場混乱に対しては株式・債券とは異なる値動きを示すため、ポートフォリオに少量加えるだけでもリスク調整後リターンの向上が期待できます。
ここではインフレ・通貨安ヘッジ、低相関によるドローダウン緩和、少額投資のしやすさという3つの観点で組み込み効果を整理します。
インフレ・通貨安ヘッジ になる
金価格は「名目金利 - 期待インフレ率=実質金利」が下がる局面で上昇しやすい性質があります。実質金利がマイナス圏に沈むと、債券金利の魅力が薄れ「無利息でも価値が減らない資産」として金へ資金が流入するためです。
- 実質金利との逆相関:過去20年の米10年実質金利と金価格の相関係数は -0.55 程度
- 通貨安ヘッジ:円安が進む局面ではドル建ての金価格に為替要因が上乗せされ、円建て価格が押し上げられる
- インフレ率3%超の期間(08-09年、20-23年)で、TOPIXの年率リターンが+5%弱に対し、円建て金は+15%前後の上昇を記録
株式・債券との相関性が低い
金は企業収益やクーポン支払いと無関係に価格形成されるため、主要資産との相関が低い点も1つの特徴です。
資産クラス(円建て) | 金との月次相関(2004-2024) |
---|---|
TOPIX | 0.07 |
米国債(ヘッジなし) | -0.02 |
J-REIT | 0.12 |
- ドロ ーダウン緩和効果:リーマンショックでTOPIXが -50% となった期間、金価格は +15%。組み入れ比率10%でポートフォリオ最大下落幅を約5ポイント圧縮
- 再上昇フェーズとの相性:株式と逆相関ではなく「低相関」なので、株高局面でも足を引っ張りにくい
流動性と少額投資のしやすさ
ゴールド投資信託は1万円未満から積立でき、基準価額で解約できるため流動性も確保しやすい点が実務上のメリットです。
- 最低投資額:多くのネット証券で100円〜1,000円単位の積立設定が可能
- 自動購入:給与日に合わせた積立や、ポイント投資に対応する証券会社も増加
- 売却のしやすさ:1日1回の基準価額で解約でき、ETFのような気配値リスクを負わない
- コスト比較:信託報酬0.4〜1.6%/年、購入手数料0〜1%。純金積立(月額料0.15%/年+広いスプレッド)より総コストは概して低い
主なゴールド投資信託のタイプ
金投信は「現物を持つか・先物を使うか」「為替ヘッジをかけるか」でリターン特性とコストが大きく変わります。自分の投資期間やリスク許容度に合ったタイプを選べるよう、代表的な仕組みを整理します。
物理現物保有型
ファンドがロンドン市場の金地金(400ozバーなど)を金庫で保管し、評価額を基準価額に反映するケースが代表的です。
- 保管コストと信託報酬の関係:保管料や監査費用を含むため年0.4〜0.8%が目安
- メリット:先物ロールコストがなく、金価格そのものを純粋に追跡
- デメリット:保管料が固定費として乗るため長期では信託報酬負担が効いてくる
- 代表例:iシェアーズ ゴールドインデックス・ファンド/SMT ゴールドインデックス・オープン
先物連動型
COMEXなどの期近金先物を保有し、価格連動を図ります。
- ロールオーバー:満期ごとに期先へ乗り換える際、コンタンゴならロールコストが発生
- メリット:保管料不要で信託報酬が低め(0.3〜0.6%)
- デメリット:ロールコストで現物価格より乖離するリスク、デリバティブ信用リスク
- 代表例:大和・ゴールド・ファンド(先物・ETF併用型)
為替ヘッジの有無
金はドル建てで取引されるため、円建てリターンには為替が影響します。
- ヘッジなし:円安局面では為替差益が得られ、インフレ+円安の二重ヘッジが可能
- ヘッジあり:ドル円変動を抑え、純粋に金価格だけを取り込みたい場合に有効。ただしヘッジコスト(年0.5〜1%程度)が上乗せ
- 使い分けの目安
市場環境 ヘッジなし優位 ヘッジあり優位 円安トレンド+インフレ ◎ △ 円高トレンド △ ◎ 為替レンジ ○ ○
投資シナリオ別モデルケース
金投信をどのくらい組み入れるかは、家計フェーズや目標リターンで変わります。ここでは 、生活防衛を重視するケースとインフレに積極対処するケース、資産形成を始めたばかりといった3つのモデルケースについてみていきましょう。
また、Pool(年2%※ 固定利回りの投資)をどう併用できるかにもふれます。
※税引前の数字。運用成果を保証するものではありません。生活防衛型のポートフォリオ
経済ショックや予期せぬ出費に備えつつ、資産を目減りさせないことを最優先する構成です。株式と債券でバランスを取り、インフレや円安時の保険としてゴールド投資信託を加え、生活費の3〜6か月分はカンムの Pool(年2%※ 固定利回り)に置くことで、流動性と利回りの両立を狙います。
資産クラス | 推奨比率 | 役割 | 具体例 |
---|---|---|---|
グローバル株式インデックス | 60 % | 長期的な資産成長 | eMAXIS Slim 全世界株式など |
先進国債券インデックス | 30 % | 相場下落時のクッションと利息収入 | たわら先進国債券など |
ゴールド投資信託(ヘッジなし現物型) | 10 % | インフレ・円安・市場急落ヘッジ | iシェアーズ ゴールドインデックス・ファンド |
Pool(年2%※ 固定利回り) | 生活費3〜6か月分 | 現金クッション+決済ポイント獲得 | Visaプリペイド積立型 |
ポイント
- 株式では、世界経済の成長を取り込み、長期的なリターンを狙う。値動きは大きいが、10年超の保有でマイナス確率は低下する
- 債券は、景気後退局面で株式ほど下落せず、価格変動を抑える。クーポン収入でキャッシュフローも確保できる
- 金投信は、実質金利低下や円安で上昇しやすく、株・債券と低相関。TOPIXがマイナス50 %となったリーマンショック期に金はプラス15 %だった実績がある
- Poolでは、普通預金の利息よりも高い年利2%の期待利回りで資金を運用しつつ※、プリペイド決済のポイント還元(0.5〜1 %)で実質利回りを上乗せする。急な医療費や失職時でもアプリから即時出金できるため、生活防衛機能を損なわない
インフレヘッジ型のポートフォリオ
物価上昇リスクに強い資産を多めに組み込み、名目リターンの底上げを狙う構成です。REITで実物資産の家賃収入を取り込み、コモディティと金投信でエネルギー・通貨安・実質金利低下に備えられます。
資産クラス | 推奨比率 | 役割 | 具体例 |
---|---|---|---|
グローバル株式インデックス | 45 % | 名目成長の取り込み | eMAXIS Slim 全世界株式など |
国内・海外REIT | 25 % | インフレ連動型家賃収入 | iシェアーズ先進国REITなど |
ゴールド投信(ヘッジなし10 %+ヘッジあり5 %) | 15 % | インフレ・円高円安の両面ヘッジ | SMT ゴールド(無・有) |
総合コモディティETF | 10 % | 生活必需品価格の上昇取り込み | WisdomTree コアコモディティ |
ポイント
- REITとコモディティで「実物価格上昇」を、金投信で「通貨安+実質金利低下」をカバーする
- 金投信はヘ ッジなし/ありを半々に分け、為替リスクを平準化できる
- 運用中は年1回リバランス。金投信が25 %を超えたら一部を株式へ、REITが35 %を超えたら一部を債券へ振り替え、資産配分の偏りを修正する
積立初心者向けのポートフォリオ
「まずは少額で投資習慣をつくる」ことを目的に、商品数と手間を最小限に絞ったモデルケースです。毎月1万円を株式と金投信へ半々で積み立て、3年間続けながら市場の値動きに慣れます。
ステップ | 毎月の流れ | 金額 | ツール |
---|---|---|---|
① グローバル株式インデックス積立 | クレカ積立で信託報酬0.1%前後 | 5,000円 | ネット証券 |
② ゴールド投信積立 | 信託報酬0.5%前後 | 5,000円 | 同上 |
ポイント 3年間積立を続けると、元本36万円に対して、以下のような結果になります。
- 株式が年5%、金が年3%で伸びた場合に評価額は約39万円
- 価格変動を経験しながら、基準価額の見方やリバランスの方法を学べる
まとめ
ゴールド投資信託は、現物保管の手間を省きながら金価格をポートフォリオに取り込める手軽な手段です。 インフレや円安への耐性、株式・債券と低相関という性質がリスク調整後リターンの向上に役立ちます。
現物型・先物型、為替ヘッジの有無でコストと値動きは変わるため、目的に合わせたタイプ選びが重要です。長期投資では、信託報酬やロール・ヘッジコストを確認し、年1回のリバランスで比率を保ちましょう。