未知の成長市場を捉える。新興国投資の戦略と可能性とは
2025.05.19経済成長と若年人口を背景に、世界中で新興国市場は注目を集めています。高いリターンを狙える可能性がある一方で、為替リスクや政情不安など特有のリスクも伴います。
可能性を秘めた新興国投資で成果を上げるためには、どのような戦略や視点が求められるのでしょうか。本記事では、新興国投資の魅力とリスク管理のポイントをわかりやすく解説します。
新興国投資の概要
新興国投資とは、経済成長が著しい発展途上国や新興市場に資本を投じることを指します。新興国として評価される国々は、経済成長率が高く、人口増加や都市化の進展によって、今後の発展が期待される市場です。先進国に比べて経済的・政治的リスクが高いものの、リターンの可能性も大きいため、多くの投資家が注目しています。
新興国の特徴は、急速な経済発展に伴う市場拡大のポテンシャルが高い点です。たとえば、中国は過去数十年で世界第2位の経済大国に成長し、インドもIT・製造業を中心に急成長を遂げています。また、東南アジアやアフリカでは、インフラ整備やデジタル化が進むことで、新たなビジネスチャンスが次々と生まれている状況です。
新興国の定義と特徴
新興国とは、経済発展の途上にあり、一定の経済成長を遂げつつある国々を意味する言葉です。一般に、世界銀行や国際通貨基金(IMF)、国連などの国際機関によって分類され、GDP成長率、産業の多様化、国際市場への参入度などの要素が考慮されます。
新興国は、一般的に「先進国」と「途上国」の中 間に位置すると考えられます。以下のような特徴によって区別される点を知っておきましょう。
- 先進国:高いGDP、発達したインフラ、安定した政治・法制度
- 新興国:速い経済成長、工業化の進展、インフラ整備が進行中
- 途上国:低い所得水準、未発達なインフラ、農業中心の経済構造
新興国は以下のような特徴があることも知っておく必要があります。
特徴 | 説明 | 例 | 理由 |
---|---|---|---|
高い経済成長率 | インフラや産業が発展中で、経済成長が速い。 | インド(GDP成長率6~7%)、中国(かつて10%以上) | 都市が発展し、消費が増え、外国企業の投資が活発 |
人口が増え、若者が多い | 若者が多く、労働力や消費が増えるため、成長のチャンスが大きい。 | アフリカ(平均年齢19歳※1 、2100年に労働人口の37.8%※2) | 出生率が高く、経済発展で中間層(消費者)が増加 |
資源が豊富 | 石油・ガス・鉱物などの資源が多く、輸出で収益を得ている。 | ブラジル(鉄鉱石)、チリ(銅)、ロシア・中東(石油・ガス) | 世界の需要が高く、輸出が経済の柱となる。 |
都市化と中間層の拡大 | 都市化が進み、中間層(消費者層)が拡大し、経済の発展を後押しする。 | インド・中国・インドネシア(都市部の人口急増) | 都市部の発展により、教育や技術産業の発展が進む |
政治や経済の不安定性 | 発展途中のため、政治や経済が安定せず、リスクが高い。 | アルゼンチン(通貨危機)、トルコ(政治不安) | 政府の 政策変更、汚職、通貨変動、法律の未整備 |
参照
※1. Africa Demographics
※2. 人口増加にみるアフリカ市場の可能性と課題
高成長を狙う意義
新興国市場への投資は、高成長・高リターンを狙える戦略的選択だといえます。先進国市場の成長率が鈍化する中、新興国はインフラ整備や産業の発展段階にあり、早期参入することで市場シェアを確保しやすいといえます。
また、新技術の普及やデジタル経済の進展によって、新たなビジネス機会も拡大している状況です。投資ポートフォリオの分散としても有効であり、一部の市場依存リスクを軽減できます。
さらに、新興国の人口増加や消費拡大のトレンドを考慮すると、長期的には大きな成長が期待できます。そのため、多くの投資家や企業が積極的に市場参入を進めやすいと状況が整っているといえるでしょう。
代表的な投資先となる地域と国
代表的な投資先となる新興国は以下になります。
地域 | 成長の特徴 | 強み | リスク |
---|---|---|---|
アジア(インド、インドネシア、ベトナムなど) | 製造業、IT、スタートアップの発展 | 人口増加、労働力の豊富さ、デジタル経済の発展 | 規制の変化、政治的な不安定性が高い、競争の激化 |
中南米(ブラジル、メキシコ、チリなど) | 資源輸出、農業、消費市場の拡大 | 豊富な天然資源、経済統合(USMCA)、観光業の発展 | インフレ、政治リスク、通貨の変動 |
アフリカ(ナイジェリア、南アフリカ、ケニアなど) | インフラ投資の増加、デジタル経済の発展 | 若年層が多く市場拡大の余地が大きい、モバイル決済の普及 | 政情不安、インフラの未整備、通貨の変動 |
中東(サウジアラビア、UAE、トルコなど) | 石油・ガス、観光、物流ハブの成長 | エネルギー資源の輸出、インフラ投資、観光産業の発展 | 原油価格の変動、地政学リスク、労働市場の制約 |
東欧(ポーランド、ハンガリー、ルーマニアなど) | EU市場との結びつき、製造業・IT産業の拡大 | 低コストの労働力、高い教育水準、欧州市場との連携 | 政治的不安定、EU規制の影響、経済の依存度 |
新興国投資のメリットとリスク
新興国への投資は、先進国にはない高い経済成長率や豊富な若年人口を背景に、大きなリターンを期待できる可能性があります。一方で、政情不安やインフラ未整備など、新興国特有のリスクも存在し、投資家には慎重な検討と対策が求められます。
ここでは、新興国投資のメリットとリスクを中心に、経済成長・人口ボーナスの活用方法から政治・社会情勢に伴うリスクへの注意点などについて解説します。
経済成長と人口ボーナスの活用
新興国は、先進国と比べてGDP成長率が高く、企業の収益拡大や株価の上昇を見込める点は魅力です。とくに若年人口が多い国では、消費需要が高く内需市場の拡大も期待できるため、以下のようなセクターが注目されるケースがあります。
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生活必需品
食品・日用品など、人口増加とともに安定的な需要が見込まれる。 -
住宅・自動車などの耐久消費財
若年層の所得向上に伴い、購入ニーズが高まる可能性がある。 -
インフラ関連
公共事業やエネルギー、通信など、開発の伸びしろが大きいため投資機会が拡大しやすい。
若年層が多いため、労働力が確保でき、製造業やサービス業の生産拠点として経済規模を拡大するケースも多いといえます。そのため、新興国への投資はポートフォリオ全体の成長力を高める役割に期待できるといえるでしょう。
政治・社会情勢に伴うリスク
新興国投資には、以下のような政治的・社会的なリスクが付きまといます。
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政策・規制リスク
- 政権交代や独裁体制などにより、税制や投資規制が突然変更される可能性もある
- 投資先企業にとって想定外の負担増や事業撤退を余儀なくされるケースも想定される
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治安・社会不安リスク
- 大規模デモや政情不安によって企業活動や社会全体が混乱し、機能しなくなる
- 地政学的リスクが高い地域では、近隣諸国との紛争が長期化し、国際貿易や経済活動が停滞する懸念もある
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回避・軽減策
- 投資先国の政治ニュースや経済指標を定期的に確認し、必要に応じて投資配分を 見直す
- 複数国への分散投資を行い、特定国の政情変化による影響を抑える
通貨や流動性リスクへの対策
新興国投資では、以下の2つのリスクに特に注意が必要です。
1. 通貨リスク
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変動幅の大きさ
新興国通貨は先進国通貨と比べて信用度が低く、急激な価値下落や不安定な値動きが起こりやすい -
ヘッジ手段
- 為替先物やオプションを利用してリスクを抑える
- 為替ヘッジ付きの投資信託やETFを活用する
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影響度
投資先企業の業績とは無関係に、為替の変動だけでポートフォリオの評価額が変動する点に注意
2. 流動性リスク
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市場規模の小ささ
新興国市場は売買高が限られており、取引が成立しにくい状況が発生することがある -
投資対象の選定
- 流動性の高いETFや大手企業の株式を中心に選ぶ
- いざ売却したいときに換金しやすい体制を整える
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分散投資・リバランス
流動性の高い商品を組み込みつつ、定期的なリバランスでリスクをコントロールすることが望ましい
リスク管理と分散投資
新興国投資には高い成長性が期待できるものの、政治リスクや為替リスクなどが存在するため、総合的なリスク管理と分散投資が不可欠です。
複数の地域・資産クラスへ投資を分散させることで、個別のリスクを低減し、長期的な安定運用を目指すことができます。また、新興国への投資に限らず、国内外のさまざま な投資商品やサービスを活用することで、ポートフォリオ全体のリスクをコントロールしながらリターンを狙うことが可能です。
地域分散と資産クラス分散
投資対象を世界に広げることで、多様な資産クラスに分散できるため、ポートフォリオの安定性が高まります。
- 複数の地域への投資
新興国だけでなく、先進国や国内市場など、さまざまな地域に投資することで、特定の国・地域の政情リスクや景気後退の影響を抑える - 資産クラスの分散
株式、債券、REIT、コモディティ、暗号資産など、多様な資産クラスに投資することで、市場の下落局面でも比較的安定したパフォーマンスを得やすい - 国別・セクター別のウェイト管理
新興国の中でもアジア、南米、アフリカといった地域、もしくは製造業、IT、エネルギーなどセクターごとに特性が異なるため、偏りすぎないように注意する
定期的なリバランスの重要性
適切な資産配分を保ち、リスクコントロールの精度を高めるために、ポートフォリオを定期的に見直しましょう。
- 運用方針の再確認
市場環境や投資目標の変化に応じて、ポートフォリオの配分を見直すことでリスクとリターンのバランスを最適化する - 利益確定とリスクコントロール
価格上昇した資産の一部を売却して利益を確定し、その分を他のアセットに再投資することで、過度な偏りを防ぐ - 長期的視点の維持
短期的な値動きに惑わされず、計画的なリバランスを続けることで、下落局 面でも継続的に投資機会を得られる
情報収集と市場モニタリング
常に最新情報をキャッチし、投資先やポートフォリオへの影響を見逃さないようにしましょう。
- 政治・経済ニュースの把握
投資先国の政策変更や政情不安などが自分の資産に与える影響を常に意識する - 経済指標の定期的なチェック
GDP成長率、インフレ率、失業率などの指標を継続的に把握し、投資判断に活かす - 専門家のレポート・アナリスト情報
信頼できる金融機関や調査会社、アナリストのレポートを参考にすることで、投資対象をより客観的に評価する
新興国も含めた投資事例のイメージ
ここでは、株式(国内・先進国・新興国)と固定利回り2%※の投資が行えるカンムのPoolを組み合わせた一例を解説します。各資産クラスの役割やポイントを掘り下げて解説しているため、参考にしながら、リスク許容度や投資方針に合わせてアレンジしてみましょう。
※ 税引前の数字。運用成果を保証するものではありません。ある投資家の目的と資産配分
ある投資家Aさんは、将来の資産形成とリスク分散を両立させたいという目的で、次のような資産配分を選択しました。
- 国内株式:特性は日本の経済状況や企業業績を把握しやすく、為替リスクが少ない:40%
- 先進国株式:グローバル規模で展開する大手企業などを含み、比較的流動性が高い:20%
- 新興国株式・債券: 高成長が期待できる一方、政治・経済情勢のリスクが大きい:20%
- Pool:初心者から経験者まで柔軟に活用できる:20%
このような構成にした背景として、国内株式である程度の安定性を確保しながら、先進国株式や新興国投資を通じて成長機会を捉えたいという意図があります。また、Poolを組み合わせることで、固定利回り2%※が期待できます。そのため、株式や新興国投資の値動きとは異なる収益源を確保可能です。
ハイリスク資産と安定的なリターンを得やすい資産をバランス良く組み合わせ、ポートフォリオ全体のボラティリティを抑えつつ、継続的な収益を期待できるでしょう。
※ 税引前の数字。運用成果を保証するものではありません。運用のポイント
リスク分散を重視しつつ、複数の収益源を活用して長期的な資産形成を目指すことが大切です。
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定期的なリバランス
価格変動によって配分比率が変化するため、目標比率に合わせて調整し、リスクを抑える -
情報収集とモニタリング
国内外の経済ニュースや金融指標、サービスの運用状況をこまめにチェックし、必要に応じて投資割合を見直す -
投資目的とリスク許容度の明確化
短期での売買益を狙うのか、長期的な資産形成を目指すのかによって適切な配分は異なる。投資家自身がどの程度リスクを許容できるかを把握し、配分を決定することが重要
それぞれの資産クラスが果たす役割や特徴を踏まえて配分することで、投資家は安定性と成長性を両立しやすくなります。とくに、新興国の高い成長余地や幅広 い分散投資が将来の資産形成に有効です。
まとめ
新興国投資は、先進国にはない高成長と豊富な若年人口による内需拡大が期待できます。政情不安や為替変動などのリスクも大きいといえます。
先進国が成熟しつつある中で、新興国は人口増や都市化により大きな需要を取り込める余地があるため、多様な地域・資産への分散と定期的なリバランスが不可欠です。政局の変化が大きい地域では、通貨リスクやインフラ未整備が重なり流動性リスクも高まりやすいため、継続的な情報収集が欠かせません。
投資目的を明確にし、リスク許容度に応じて運用方針を見直すことが、長期的な資産形成の鍵となるでしょう。