分散投資で投資初心者から上級者までリスク管理を。基本的な考え方を解説
2024.08.09分散投資は、投資家のリスクを軽減し、ポートフォリオの安定性を高めるための投資方法です。投資初心者から上級者まで、あらゆる投資家にとって重要な戦略の1つだといえます。しかし、具体的にどのような投資方法なのかを把握していないという方もいるのではないでしょうか。
本記事では、分散投資の基本的な考え方から実践的なリスク管理の方法までを詳しく解説します。多様な資産や地域の分散、産業への投資を通じて、どのようにリスクを分散し、投資ポートフォリオの安定した成長を目指すかについてみていきましょう。
分散投資とは
分散投資とは、異なる資産や地域、産業に対して投資することで、全体的な安定性とリターンを向上させるための戦略です。特定の投資対象に依存するリスクを減らすことを目的としています。考え方として、特定の株式や債券のみに投資するのではなく、幅広い視点から投資先を選択するといった投資方法であれば、分散投資に該当するといえます。
分散投資の特徴
分散投資では、幅広い視点から異なる資産(株式、債券、不動産、コモディティ、定期預金など)に投資することが前提です。各資産は異なるリスクとリターンの特性を持っており、市場状況による影響も異なります。たとえば、株式市場が下落している場合であっても、債券市場や不動産市場が安定していれば、ポートフォリオ全体のリスクを抑えられます。
また、異なる国や地域に投資すれば、一国の経済や政治状況によるリスクを低減できます。株式だけでも日本株や米国株、欧州株、新興市場株などといった種類があります。そのため、分散投資を実施することで特定の地域における経済危機の影響を軽減可能です。
そして、異なる産業(技術、ヘルスケア、金融、消費財など)への投資も分散投資に該当します。たとえば、景気拡大期には、消費財やテクノロジー分野が好調となり、景気後退期には公益事業やヘルスケア分野が比較的安定したパフォーマンスを示すケースが多い傾向です。そのため、異なる分野への投資もポートフォリオの安定性の確保につながります。
分散投資が重要な3つの理由
分散投資が重要な3つの理由は以下のとおりです。
- リスクの軽減
- 投資パフォーマンスの安定化
- 投資機会の拡大
分散投資を実施する最大の目的はリスクの軽減です。特定の株や分野に集中して投資した場合は、状況が悪化したタイミングでポートフォリオ全体が大きく影響を受けるリスクがあります。しかし、複数の異なる資産に分散投資すれば、個別の投資が悪化した場合でも、他の分野でリスクをカバー可能です。
そのため、ポートフォリオ全体のリスクを低減することができます。また、長期的な視点では、単一の資産や市場に依存しないため、長期的な市場変動への柔軟性を高められます。
分散投資のメリット
ここでは分散投資のメリットとデメリットについて詳しくみていきましょう。とくに、リスク管理とリターンの安定を目指す投資家にとって欠かせない戦略です。資産を異なる投資先に分散させることで、特定の市場や資産に依存するリスクを軽減できます。
リスク軽減ができる
分散投資の実施によって、特定の資産や市場に依存するリスクを軽減できます。たとえば、株式市場の変動に対するリスクを債券や不動産など他の資産に分散することも可能です。全体のリスクを分散できるため、ポートフォリオが特定のリスク要因によって大きな影響を受ける可能性も低減できます。
投資パフォーマンスの安定化が図れる
分散投資では、異なる投資先のパフォーマンスを平準化できるため、全体的な投資パフォーマンスの安定化につながります。資産の種類ごとに、経済サイクルや市場の変動に対して異なる反応を示すことから、特定の投資先が不調でも他の投資先でカバー可能です。
長期的な資産運用ができる
分散投資によって、市場や経済環境の変化に柔軟に対応できる分散されたポートフォリオ作りが可能です。資産形成や運用の機会を最大限に活用しつつ、リスクを適切に管理できます。そのため、投資家は経済の変動に耐えながら、長期的な資産増加を図ることが可能です。
分散投資のデメリット
分散投資はリスク軽減やパフォーマンス安定化など多くのメリットがあります。しかし、いくつかのデメリットもあるため、ここではデメリットについてみていきましょう。
過度な分散によるパフォーマンス低下がありえる
過剰分散によって、ポートフォリオのリターンを平均化しすぎてしまうケースもあります。投資先を増やしすぎたことで、特定の高リターンを見込めた投資がポートフォリオ全体に与える影響が薄まり、リターンが低下するという流れです。
過度な分散は、リスクを低減できるものの、潜在的なリターンも制限します。そのため、投資家が期待するリターンを達成しにくくなるケースも少なくありません。
管理が複雑になりコストが増加する
分散投資には、複数の資産や投資先を管理するためのコストと労力が必要です。たとえば、取引手数料や管理費用、税務申告はどのような取引でも発生する可能性があります。
また、多数の投資先を定期的にモニタリングし、リバランスする必要があるため、投資の管理が非常に複雑になるケースも多くなっています。そのため、分散投資を行う場合は、管理にかかる時間とコストを考慮しましょう。
短期的リターン見込みにくくなる
分散投資は長期的な資産成長を目指す戦略です。そのため、短期的なリターンを目的とするものではありません。そのため、短期的に大きなリターンを得る可能性は低くなりがちです。特定の市場や分野が急騰した場合であっても、分散されたポートフォリオ全体のリターンは大きく増加しないといえます。
短期的な利益を追求する投資家の視点からすれば、リターンが低く感じられるため、満足度が低下するケースも多くなっています。
3つの効果的な分散投資の方法
ここでは、効果的な分散投資の方法についてみていきましょう。資産の種類、産業、地域などさまざまな視点から投資する方法があります。
資産の分散
資産には、次のような種類がある点を知っておきましょう。そのうえで、資産を分散することで、特定の市場の変動がポートフォリオ全体に与える影響を軽減できます。
- 株式
- 債券
- 不動産
- コモディティ
- 投資信託
- NISA
- iDeCo
- 定期預金
- 不動産投資信託(REIT)
経済状況や市場環境に応じて、各資産は異なるリスクとリターンの特性を示します。たとえば、株式は高リスク・高リターン、債券は一般に低リスク・低リターンといった特徴があります。資産の分散は、ポートフォリオ全体のリスクを軽減し、経済の変動に対する耐性を高めるための基本的な戦略の1つです。
また、資産の特徴を把握しておくことも大切です。たとえば、定期預金の金利は0.02%※1ですが、固定利回りのPoolに投資対象を切り替えることで年間の利回り2%※2が期待できます。
そのため、投資先となる資産の特性をふまえた投資を検討してみましょう。
※1 2024年4月1日時点の都市銀行3行の平均値(税引前)。預金保険制度により元本1,000万円までとその利息が保護されます。 ※2 税引前の数字。運用成果を保証するものではありません。 ◯ Poolの投資は預貯金と商品性が異なることを事前にご確認ください。 ◯ 大手銀行預金の利率やその他条件は各金融機関によって異なる場合があります。国内外を含めた地域の分散
国内外の異なる地域に分けて行う方法も効果的な分散投資です。国や地域が異なれば、独自の経済状況や政治環境、規制内容がそれぞれの市場に影響を与えます。
たとえば、アメリカや日本、欧州、新興国市場はそれぞれ異なる経済状況とリスク要因を抱えています。そのうえで、地域分散を行えば、特定の国の経済危機や政治的な不安定性からポートフォリオを守りつつ、成長市場への投資機会も得やすくなるといえるでしょう。
産業の分散
各産業に分けて分散投資を行う方法も検討できます。たとえば、エネルギーや金融、テクノロジー、ヘルスケア、消費財などは異なる市場リスクと成長の可能性があります。
たとえば、エネルギー産業は、原油価格や環境規制の変動に強く影響を受けるため、リスクが高いものです。しかし、需要が安定しているため、大きなリターンも期待できます。金融分野は銀行、保険、資産管理などが含まれ、金利変動や経済成長に左右されるものの、特定の環境では高い収益性が期待できるケースもあります。
投資する産業を分散した場合は、ポートフォリオ全体に与える影響を軽減し、それぞれの市場の成長機会をうまく捉えることで利益を狙うことが可能です。
リスク管理のための戦略
リスク管理は、投資の安定性と持続可能な成長を確保するための重要な要素です。投資におけるリスクは避けられません。しかし、適切な戦略を用いることでその影響を最小限に抑えることが可能です。ここでは、リスク評価と管理手法、ボラティリティを抑えるための具体的な戦略についてみていきましょう。
リスク評価と管理手法
分散投資の目的は、特定のリスク要因がポートフォリオ全体に与える影響を軽減することです。リスク評価は、各資産クラスや投資対象のリスク特性を把握し、ポートフォリオ全体への影響を把握するために重要です。分散投資における主なリスク評価のポイントは以下のとおりです。
- 市場リスク: 各資産の市場変動によるリスク。たとえば、株式市場全体の下落は株式投資に影響を与えるものの、債券や不動産の影響力は薄い。
- 資産の関係性: 異なる資産がどのようなタイミングで動くかを冷静に評価することで、分散投資の効果を高める組み合わせを見つけることができる。
管理手法としては、ポートフォリオの定期的な見直しとリバランスが大切です。資産価格の変動によって、ポートフォリオの資産配分が変わってしまうケースもあります。そのため、定期的にポートフォリオを見直せば、最初に設定したリスク・リターンに合わせて資産の割合を調整でき、長期的な投資目標を達成しやすくなります。
ボラティリティを抑えるための戦略
ポートフォリオのボラティリティを抑えるためには、安定的な資産への投資が効果的です。安定性の高い資産は、債券や不動産投資信託(REITs)、公益事業株などが代表的です。一般的に市場の変動に対して、安定したパフォーマンスを示しやすいため、ポートフォリオの全体的なボラティリティを低減するのに役立てられます。
景気後退や市場の不安定さに強い資産に重点を置くアプローチ方法もあります。たとえば、消費必需品や公益事業といった分野は、景気変動に比較的強く、ボラティリティが低いものです。そのため、資産の特製を把握したうえで投資することで、市場の変動が激しい時期でもポートフォリオの安定性を維持できます。
分散投資と長期投資は相乗効果が期待できる
分散投資と長期投資は、それぞれ投資家にとって重要な戦略です。そして、2つの投資方法を組み合わせることでより効果的な投資が可能です。長期投資の基本的な考え方は、市場の短期的な変動に惑わされず、長期的な成長の可能性を重視するという点は知っておきましょう。
長期投資のメリット
長期投資の主なメリットは、市場の短期的な変動を無視することで、一時的なパニック売りや市場のノイズに左右されない点です。また、長期投資は複利効果を最大限に活用できます。
複利効果は、投資によって得られた利益がさらに投資され、利益が利益を生むという仕組みです。長期的に資産を運用することで、複利効果を活かし、資産の形成が可能です。
長期投資は短期取引に比べて、長期投資の運用による税率は低いため、長期的に資産を保持することで税負担を軽減できます。また、頻繁な売買を避けることで、取引手数料やコストも削減されます。
分散投資と長期保有のシナジー効果
分散投資によって異なる資産や市場、分野に資産を配分することで、特定のリスク要因がポートフォリオ全体に与える影響を軽減できます。そのため、長期的な視点では、投資ポートフォリオのリターンがより安定し、リスクが低減します。
長期投資と分散投資を組み合わせることで、市場変動に対するポートフォリオの耐性が強化されます。市場の動きの一部が不調でも、他の部分でカバーできるため、全体のパフォーマンスを維持可能です。そのため、投資家は市場の一時的な変動に過剰反応することなく、長期的な投資計画を維持しやすくなります。
また、新興市場や特定の成長産業に投資することで、伝統的な市場では得られない高いリターンを期待できます。長期的な視点から資産の成長機会を上手く捉えることによって、資産増加が期待できます。
まとめ
分散投資とは、リスク管理とリターンの最適化を目指し、資金を異なる資産の種類や地域、産業に分散して投資する戦略です。特定の投資対象に依存するリスクを軽減し、ポートフォリオ全体の安定性を向上させる効果があります。
分散投資の主なメリットはリスクの軽減や投資パフォーマンスの安定化などが挙げられます。また、長期的な視点での分散投資では、時間の経過とともに複利効果を活かし、資産を効率的に増やすことが可能です。これから投資を始める方もすでに投資を行っている方も、リスクとリターンのバランスを最適化するために、分散投資に取り組んでみましょう。